近年の美術教育の世界は、研究の方法論やデータ分析の方法など、様々な専門知を活用し、論文などの形式は大変アカデミックなものに見え、活性化しているように見えます。
しかしその一方で、そうした研究が扱う美術/アートの内容そのものの質はどのように考慮されているのかについて、いささか不安を抱くこともあります。方法論がいくら精緻なものであっても、それが扱う内容、つまりは美術/アートの経験そのものが、質的な価値を持たなければ、研究そのものが空虚なものになってしまうのではないかということです。別の角度からその問題に言及するなら、アンリ・ベルクソンが人間の行為や意識を時間の中で分割することはできないのだと主張していたように、美術/アートが生起する場で持続するその経験や時間を質的な全体性を有するものとして扱う必要があるのではないかということです。近年注目されているArt Based Research(ABR)は、そうしたアート経験のプロセスの全体性を担保しつつ、その経験をどのように研究対象として扱う事が可能か試みているように思います。本シンポジウムでは、アート経験そのものに焦点化し、美術教育について再考する機会に出来ればと考えます。
ABRの研究を進める小松佳代子には、ABRとはどのような研究なのか紹介していただき、本シンポジウムの目的との関係からその可能性や課題を指摘していただきます。そして、現代美術家の岡田裕子には、岡田の作品を紹介してもらいつつ、その作品の制作において作家はどのような時間を経験しているのかを話していただきます。
両者の発表をふまえ、わたしたちが扱う美術/アートにおける経験、時間とはどのようなものであるのかを、今一度確認するとともに、ABRの現代的意義についても検討したいと思います。
タイトルで、あえて「アート」と題したのは、ものとしての近代美術的な作品のイメージから離れ、個人が世界の中で何かを感じ、イメージを抱き、それを何らかの形で表現しようと試みる一連の流れを「アート」の営みと捉え、美術教育の最も重要な核心であるという考えからです。
時間 | 9月13日(土)15:05~16:35 |
場所 | 千葉大学2号館1階 2101 教室 |
登壇者 |
小松佳代子(長岡造形大学教授) 岡田裕子(現代美術家) |
司会・コーディネーター |
神野真吾(千葉大学准教授) |
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